少年 海へ

 夏はいつの間にか過ぎ去って、もう秋風が……。今年は恒例のハワイどころか、国内を旅することもなく、一体どうしてたんだって? 何もやっていなかったわけじゃない。ちょっと訓練していただけさ。

Shounen
 
 シーカヤック。やらかしてしまった。目的はもちろん、漁ですよ。これまで山側や浜辺を中心にいろいろ収穫してきたけれど、もっとゴージャスな獲物を目指すなら、行くしかない。それに目前に海がある地で暮らしているのだから、今まで楽しんでいないほうが不思議な気も……。
 
 親父が数日、訓練コースに通って先日、ついに進水式。少しミリタリーなペイントをしたカヤックは3人乗りで、いかにも釣れそうな雰囲気でしょう。葉山の浜から漕ぎ出して、御用邸の前あたりで糸をたらす。めざすはキス、アジ、クロダイ……。もちろん、簡単には釣れやしないんだけれども、海風が心地よい。水平線は丸くひろがり、空も海のように果てしなく。3人波間をぷかぷかしていると、ほんと、地球に包み込まれたみたいな気分。こぎ疲れたら岬の浜でひと休み。普段歩いている浜を反対側から眺めるのも新鮮。
 
Misaki
 
 それにしても、こぎっぷりはまだまだだけれど坊やは海に出られるようになったのか。メバルだのカサゴだの、結構釣果もあがっている。もういっぱしの少年ってことかな。 
Kawahagi_2
 さて、本日の釣果はこいつ。27センチの大カワハギ。肝がたっぷりあったので、肝しょうゆで薄造りを堪能。無論、サイコーでした。釣ったのは坊やではなくて、なんと家人。もう、さっきからずっと鼻高々状態。えっ、親父はどうしたかって? カサゴだの釣りましたけれど…… ハイ、修行します。


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目黒のメジロ

Mejiro
 雨の予報ですっかりあきらめていた5月最後の日曜日。目覚めたら青空が広がっている。さあ、どこへ行こうかと顔を洗って窓から外を見たら、こんにちは。おやおや、そんなところに住まわれていましたか。
 
 メジロ。鎌倉に住んでからは一番よく見かける鳥。いつも果樹のあたりで群れて、我が家の収穫を味見していたが、ついにシャラの木に腰をすえた。それにしても窓からわずか50センチ。ずいぶん信用されているね。最近読んだ新聞記事ではスズメが減り続ける一方、メジロは街で増えているとか。人のそばに平気で住む肝っ玉の太さゆえかな。
 
 メジロはどうやら抱卵中。坊やは初めて見る鳥の巣ごもりを食い入るように見つめている。そのうち「そばで見ちゃだめかな」なんて言い出して、外に飛び出した。「おいおい、びっくりして逃げちゃうぞ」と言いつつ、親父もカメラを持って追いかける。 
 
 スモモの木をくぐりぬけ巣の前に行くと、当然メジロはあわてて飛び出した。あたりで怒ってさえずり続けている。「ごめんごめん。ちょっとだけだよ」と謝りながら、坊やと巣をのぞきこむと「いた!! 目が黒いよ!!」w(゚o゚)w
 
Meguro
 
 3羽もお子さんがおられましたか。大きな口をあけて親鳥を必死に呼んでいる。坊やはびっくりして声も上げられない。そのうち「毛がないから寒そう。早く親鳥に戻ってもらおうよ」だって。
 
 部屋に戻ってしばらくすると、メジロは何事もなかったように、巣に戻っていた。よく見ると集めた草を蜘蛛の糸でからめて作った巣も見事なつくり。何度も素材を集めてきて編み上げる力が、小さな鳥のどこに隠されているのだろう。目前にはジューンベリーの木。果実はそろそろ食べごろ。そんなことも考えて居を構えたのか。「今年はメジロにも分けてあげなくちゃね」。坊やはいつの間にかベリーで唇を真っ赤にしている。

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たけのこ焼けた?

Soramame

 「5連休、本当にいいのか」と何度も確かめたけれど、今どきの会社は社員が休むほうがありがたいらしい。でも、このインフルエンザ禍では海外に行くわけにもいかず、「1000円乗り放題」の渋滞高速に突入する勇気も……。ならば、久しぶりに庭を満喫。
Okome 
Yaitara 
 焼きソラマメをつまみながら見つめているのは、脇にゴロリ横たわったとれとれのたけのこ。熾き火でじっくり焼くと、ゆでるよりずっ
とおいしくなるんだな、これが。どうせなら一緒に切ってきた竹でご飯も炊いてみようじゃないか、と本当に久しぶりの盛り上がり。やっぱり休みはこうでなくちゃね。 
     だいたい焼いた野菜っておいしすぎる。ソラマメはワタの水分で、ふっくらみずみずしい焼き上がり。ゆでたヤツとは味の濃さがまるで違う。野菜自体の水分でゆで上がるから、うまみが損なわれない。いくら焼いても家人と坊やにつままれて、飯が炊き上がるころにはレジ袋満杯のソラマメがすべて消えていた。 焼きたけのこと竹筒飯も原理は同じだから、おいしいに決まってる?

Chikutouhan

 さて、竹筒飯。竹筒から出る水蒸気が透明になってきたあたりで、できあがり。しばらく蒸らして竹を割ってみれば、ふわっと竹の香りが庭中に漂った。と同時に焼いた丸のたけのこを包丁で割ると、薄黄色の身から湯気が噴き出すようにあがって香ばしい空気はさらに濃密に……。あとはたけのこにしょうゆをタラリとたらしてかぶりつき、竹のエキスがしみこんだご飯をかきこむだけ。一口かみ締め呼吸するたびに、口中はもちろん、たけのこの若い香りと甘みが体中にしみこんでいく。坊やでもたけのこ丸々一本軽くいってしまう感じ。ご飯もあっというまになくなった。

Yakitakenoko
 
 実は鎌倉に住み始めてここ10年ほど、店でたけのこを買ったことがない。持つべきはよき友。おかげで以前は知らなかったたけのこの味を、今は味わえる。でも、生まれて以来自分で掘ったたけのこを食べている坊やにとっては、この味が当たり前か。「もう1本食べていい?」なんて言いながらかぶりつく彼がうらやましいやら悔しいやら……。
 たけのこ食べて背も伸びたか? あした確かめてみよう。

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熟秋

Feijoa2






 森の葉が落ち始めて、散歩が楽しい時期なのに、あいにくの雨。我が家のあたりはうっすらと霧がかかって、冬が近づいていることを教えてくれる。こんな日は熱いコーヒーをすすりながら、カメラいじりでもしているしかない。追熟中のフェイジョアで遊んでみる。
 初夏には花が満開で、どれくらい取れるかと楽しみにしていたのに、よい具合に実ってくるとメジロが来襲。なかなかたっぷり収穫というわけにはいかない。
 一粒手にすると、ふんわりさわやかな香りが立ち上ってくる。南国風の果実なのに、すっきりした感じが好み。もう少ししたら、酸味が感じられるようになるのかな。昔作ったハスの果托にサンキライと飾り付けてみたら、ふむ、自然なクリスマスカラーがよい感じ。憧れのモランディ風とまでは言わないけれど、手にとって見たくなるでしょう。
 最近は気が早い人が多いようで、もう壁面全体にクリスマスのイルミネーションを飾り付けている家がある。まあ、好みだけれど、我が家はこれくらいの彩りで十分。
 「フェイジョア、いつ食べる?」と聞くと 坊やは「うぅん、ぼくは今忙しいから」なんて言う。最近,読書に夢中。こいつも少し熟してきたかな。

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やっぱり秋は…

Akihousaku

 さて、お久しぶり。ちゃあーんと帰ってますよ。ハワイ暮らしは夢ですが、まだまだ稼がなくてはかないません。構想はいろいろあって、たとえば豆盆栽の店をホノルル辺りに出す。もちろん、豆盆栽はカウアイで暮らしながら生産するという具合。気候がよいし、森の中には結構コケが生えていたりして、うまくいきそう? 夢は広がりますな。
 
 と、帰国後もたわいもない話ばっかりしていたら、さすがに家人が怒りだした。「うまくいくわけない。だいたい、日本でもハワイに負けないほど収穫を楽しんでいるでしょ」だって。確かに。今年はどれもこれも本当に豊作。晩酌の銀杏はもちろん栗も胡桃も何度も楽しんだのに、まだ冷蔵庫に大量保存されている。早々秋らしくなった気候が良かったのか、毎年同じこと繰り返しているから、採れそうな場所の勘が利くようになったのか。「チルドにしておけばどんどん糖度が高くなる。これで正月の栗きんとんは安心。胡桃はペーストと胡桃パンをつくって楽しもうか」と家人。ほんと、冬眠に備えるリスみたい。
 
 そういえば、栗と胡桃はともかく銀杏を海外で食べるって話はあまり聞いたことがない。中国くらいかな。やっぱり臭いが敬遠されてしまうのかな。こんなにおいしいのに。熱々の銀杏の殻を割って、ぬる燗をちびちびやりながらひとりごつ。
 
 やっぱり秋は鎌倉……。

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