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飛翔の時

uka
 
 
 
 
 
 
 
 いつの間にか、庭はセミの抜け殻だらけになってしまった。ちょっと葉っぱをめくると、「おや、いらっしゃいましたか」という感じ。そのせいで、自分の席がなくなったわけではないのだろうけど、時にはこんな変り種もいる。夕刻、買い物から帰ると玄関先の鉄椅子でがんばってました。
 セミの羽化。背中が割れて真っ白な体が出てくる瞬間は、本当に感動的。でも初めて見た坊やはびっくりして、事態が飲み込めない。「これ何の虫、セミが食べられちゃったの?」なんて聞いている。私もそうだったからね。
 あれは小学生時代の夏休み。夕方、林で小便していると、木の根元に白い物体を見つけた。しゃがんで見れば、まさに殻から抜け出ようとしているセミ。その緑がかった色の美しさに驚き、変身を数時間見守ったのだった。しかし、私はそのうち大失敗に気づいた。少しかけてしまったらしい。彼の羽は曲がり、飛べなくなってしまったのだ。
 そんな苦い思い出があるから、今回は慎重。指を伸ばそうとする坊やを制したり、寄って来るアリを撃退したり、まるで彼のガードマンだ。
 無事に羽化を済ませ、羽が乾いた彼は、緑のきれいなミンミンゼミ。しばらくすると、昔の申し訳ない記憶と一緒に飛んでいった。

 

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BlackBerry

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 竹富島から帰ると、いつも夢の中を漂っているような感覚になる。食事も新聞の文字も町の眺めも、薄い皮膜を通して味わい見ているよう。眼をつぶればすぐ分かる。目前には真っ青な海と珊瑚の石垣で仕切られた昔の街並み風景。自分はまだ帰っていない。
 テレビも電話も持たぬ日々。朝は夜明けに眼を覚まし、日がな海と木陰をぶらぶらしたり、昼寝したり。夜は真っ暗な道を、蛍の光と天の川を目印に酒場探し。数日そんな生活を続ければ、浮世のことは雲散霧消。あすから仕事なんて言われてもねぇ。
 ベッドでぐうたらしていると、家人が裏庭から「かごを持ってきて」と叫ぶ。渋々足を運べば、垣根のブラックベリーが鈴なり。旅の間にこんなになるとは、びっくり。早速坊やが「今年は甘いよ」と一粒差し出す。家人は「酸っぱいので少しは眼を覚ましたら」。はぁ? それにしても、2人が元の暮らしに早々復帰しているのには感心してしまう。
 黒々と熟したやつを口にすれば、甘みと適度な酸味。摘んでそのまま口にするのが一番だけど、凍らして食べる手も。夏の夢を覚ます冷え冷えの酸味、結構いけますよ。

 PS. 本サイトの写真ギャラリー、「鎌倉StillLife]をオープンしました。右のMyGalleryのリンクで、行くことができます。こちらは写真のみですが、本ブログと合わせてお楽しみいただければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。

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