木蓮のランプ
ご機嫌斜めな春が続いている。寒くなったり、暖かくなったり。雨も強く降ったかと思えば、突然雲間から日が差して、濡れそぼった満開のミモザが一瞬輝く。「毎年こんな感じだっけ?」。休日に外に出られず、やはり機嫌の悪い私に家人は素知らぬふり。黙々とアケビのつるを、枝に絡み付けている。
木蓮のランプ。先日散歩中に拾った剪定された枝を庭のバケツに生けていたら、数輪の花が咲いた。といって、このまま木に育つわけでもないから、一夜の飾りつけをしてやりたいのだという。夕刻前には完成して、灯してみればこんな具合。ランプは一つだけなのに、ろうそくのような花それぞれが暖かな色を放ちだす。まさに生命力。壁に映る影もよい感じ。
わからないのは剪定をした理由だ。これからが見ごろなのに、春の息吹をあっさり切り捨てるとは。雪も降らない生ぬるい暖冬は、人の心に春が来ることさえ忘れさせるのか。もちろん、切ってくれたおかげで、こちらは楽しみが増えたのだから、文句を言うこともないが……。
花ランプを眺めて燗酒をなめていると、強烈な潮の香りが漂ってきた。自家製のハバのり。ちぎって口に放り込めば、機嫌の悪さはどこへやら。家人の連れてきた春に酔っている。
木蓮の花言葉は「自然への愛」。春の息吹に乾杯。
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