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残り香

Sakuraboshi
 六国見山はすっかり若葉の輝きに覆われて、初夏の雰囲気。ついこの間まで、我が家の前で八重桜を摘む人を見かけたのに。季節が過ぎるのは早いもの。でも人の心はそうあっさりとは変われない。もう少しのんびり行く春を楽しみたい。

 桜の塩漬け。塩とレモンに数日漬けて、庭で半日ほど天日干しすればできあがり。干している間は辺りに桜の香りがぷーんと漂って、ハンモックの親父はすっかり夢心地。この香りは少し酒に酔ったような気分にさせる。
 
 それにしても桜にこんな香りがあるって知っていた? ドンちゃん騒ぎの花見では桜の真価はわからない。色も見事。レモンの効果でほとんどショッキングピンクに染め上がった。桜湯にするか、吸い物にするか。いろいろ使いようがあるのもうれしい春の残り香。
 
Sakuraohagiふと気がつけば、家人と坊やがハンモックの脇でニヤニヤしている。眠ってしまったらしい。体を起こすと、坊やが何やら差し出した。桜のおはぎ。さすが家人。桜の塩と餡子がこっくりと溶け合って、これはたまらんという感じ。
 
 「今夜はこのお酢を使って、何か作ってみようか」。家人はさらに桜色に染まったお酢を顔に近づけてきた。ふむ、この香りもたまりませんな。晩の献立でも考えながら、ハンモックでもうひと寝入りしますか。「散る桜 残る桜はおいしくいただきます」。良寛さんに怒られそうな春の午後。

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百薬の長

Habanori
 最近すっかり酒に弱くなった。わずかな量でも、あっという間に顔がのぼせる。すこし深酒すれば記憶が怪しくなる。そろそろカンゾー様にも休暇が必要なのだろうか? 朝7時半に目覚め、昨晩の花見の宴での自分の行動を思い返しつつ、考える。

 20年近く酷使しているから休ませたいのは山々だが、酒は料理を引き立て、会話を弾ませる。だから今日も一杯。タバコはあっさりやめられたのにねぇ。家人は「それをアル中と言うのだ」といつもあきれ顔。「こんな調子なら、酒の飲めない究極の晩飯を考える」とまで言う。それがどんな献立か、見てみたい気もするけれど……。
 
 とかなんとかベッドで一人黙考をしていると、窓から潮の香りが漂ってきた。 階下へ降りると、庭にひじきとアオノリが天日干しされている。先日、家人と採ってきたと話しながら、坊やはアオノリの乾き具合を確かめ、味見したりしている。親父の頭の中には晩の献立が次々に。「やっぱり日本酒だよな」。おいおいさっきまで何を考えていたんだ、お前って言う奴は!!
 
 自分の頭をたたく親父を不思議そうにみながら、坊やはひとこと。「きょうはひじきご飯を作って、アオノリをかけて食べるんだよ。僕が考えたメニューだよ」だって。おっ、それもなかなか良さそうじゃないか。相方はやっぱりお茶だな。親孝行な奴め。
 
 彼の言うとおり作ってみれば、こっくりしたひじきとご飯の甘みに、アオノリの濃厚な香りとぱりぱり感が加わり、もう言葉はいらない。冷茶をごくりと飲み干して「ぷはぁーッ」。窓の外にはおぼろ月。少し体が清められたような気がする一夜。

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