春の雪
「ふきのとう採りに行こう」。家人がこう言い出した時はさすがに驚いた。久しぶりの大雪。標高の高い我が家の辺りは20センチは積もっている。先日空き地で見つけたのがそろそろ食べごろというが、こんな日に誰かに先を越されるはずもないのに。
見事な降りっぷり。空き地は雪が下草に持ち上げられて膝下まで積もっている。家人はそんなことお構いなしにザクザク足を踏み入れていく。雪をかきわけてしばらくするとその手にはふきのとうが……。今年の寒さは厳しいのに春の使者はみずみずしい緑を放ち、ぷっくりと太っている。 「おいしそうでしょ?」と満足げに話す家人に雪玉を一発お見舞い。あとは坊やも参加して、犬も食わない夫婦雪合戦。
それにしても、雪の休日は家人と坊や以外の人を見かけたことがない。住んでいる場所が原因なのだろうけれど、いつもよりずっと濃密な家族の時間。白い世界にあたたかく包まれて、額縁の中に入れられたような気分になる。
収穫はもちろん、晩のメーンに。そのまま天ぷらにするのもよいけれど、白味噌とモッツァレラチーズをつめて揚げてみた。チーズと味噌のこくで花芽の苦味が和らいで、よりさわやかな春の味わいに。「オニは外、福は内」と声を張り上げる坊やを眺めながら、ぬる燗で一杯。雪の立春。白い一日。
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