少年 海へ

 夏はいつの間にか過ぎ去って、もう秋風が……。今年は恒例のハワイどころか、国内を旅することもなく、一体どうしてたんだって? 何もやっていなかったわけじゃない。ちょっと訓練していただけさ。

Shounen
 
 シーカヤック。やらかしてしまった。目的はもちろん、漁ですよ。これまで山側や浜辺を中心にいろいろ収穫してきたけれど、もっとゴージャスな獲物を目指すなら、行くしかない。それに目前に海がある地で暮らしているのだから、今まで楽しんでいないほうが不思議な気も……。
 
 親父が数日、訓練コースに通って先日、ついに進水式。少しミリタリーなペイントをしたカヤックは3人乗りで、いかにも釣れそうな雰囲気でしょう。葉山の浜から漕ぎ出して、御用邸の前あたりで糸をたらす。めざすはキス、アジ、クロダイ……。もちろん、簡単には釣れやしないんだけれども、海風が心地よい。水平線は丸くひろがり、空も海のように果てしなく。3人波間をぷかぷかしていると、ほんと、地球に包み込まれたみたいな気分。こぎ疲れたら岬の浜でひと休み。普段歩いている浜を反対側から眺めるのも新鮮。
 
Misaki
 
 それにしても、こぎっぷりはまだまだだけれど坊やは海に出られるようになったのか。メバルだのカサゴだの、結構釣果もあがっている。もういっぱしの少年ってことかな。 
Kawahagi_2
 さて、本日の釣果はこいつ。27センチの大カワハギ。肝がたっぷりあったので、肝しょうゆで薄造りを堪能。無論、サイコーでした。釣ったのは坊やではなくて、なんと家人。もう、さっきからずっと鼻高々状態。えっ、親父はどうしたかって? カサゴだの釣りましたけれど…… ハイ、修行します。


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七夕キャンドル

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 七夕だっていうのに星は見えない。だから何とかしろと家人。久しぶりに早く帰れたのに、のんびりするどころか木登りする羽目に。まあ出来上がりは涼しげではあるかな。
 
 七夕キャンドル。ミモザに廃油で作ったキャンドルをいくつかつるしてみる。夏至の日から七夕までは「100万人のキャンドルナイト」の実施期間。加えて今日は「七夕ライトダウン」。温暖化の抑止や星のみえる夜空を取り戻すため、主催者たちは「電気を消してスローな夜を」と訴える。残念ながらそこまでの主張は持ち合わせないけれど、我が家ならこんなやり方というわけで、やってみた。
 
 意外に空が青くていい感じ。てんぷらの残り油でいけるのもうれしい。夕方の犬の散歩で通りかかった人は「クリスマスツリー?」なんて戸惑っている。部屋の灯りを消して刻一刻と変わる空の色と揺れるキャンドルの炎を眺めていると、夜はただ暗いだけじゃないと思い出す。坊やもじっと見つめている。
 
 「本当の七夕は旧暦だから、来月。その日は星明かりでキャンドルもいらないほどになればいいのに」と家人。実は新暦の7月7日が晴れる確率は2割ほどだとか。一方、旧暦の7月7日(今年は8月7日)は晴天確率が高いうえ、月の入りが早く、真っ暗な夜空で星を眺められるという。なるほど、今日はこうやって灯りを楽しむしかないわけか。
 
 標高が高い我が家の辺りは今の時期、夜が深まると山の上から霧が降りてきて、一帯を覆いつくす。キャンドルは白い世界にぼーっと輝いて、そのうち消えていった。

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森のブランコ

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 「山いこうか」。家人と坊やが言い出すのはいつものことだけど、今日は荷物が違う。穴をあけた板とロープ?持って行ってどうするのかと聞けば、やっぱり……。
 
 森のブランコ。家のつるのブランコはすっかり壊れてしまったので、新しいのを作るかと思っていたら、家人はもうそれでは物足りないらしい。山道を少し外れると、地面に向かって長々と枝を伸ばしている大木を発見。家人は手馴れた様子でロープを枝に投げかけ、板の穴に通して結べば出来上がり。思いっきり坊やの体を持ち上げて、枝の向こうに投げつけてやると、ブランコは公園ではとても望めない大きな弧を描いた。坊やは「ひゅーひゅーっ」と叫びながら、本当に気持ち良さそうだね。
 
 親父も試してみる。体重68㌔ではどうかと恐る恐る乗ったものの、木は軽々と受け止めて、緑のなかに跳ね上げる。子どものころは、これくらい思いっきりブランコをこいだよな。ひょっとしたら一回転してしまうかもと思うほどこぐと、目の前には空しか見えなくなって、手を離したら飛んでいけそうな気がして……。
 
 実は同じようなことを考える人が意外にいるらしい、森を歩くと枝から吊ったブランコに時折出会う。中でも御●の森の高さ10㍍ほどの枝にかかったものは、どうやってぶら下げたのか。乗ってみれば山の斜面から空に飛び出してしまいそう。スリル満点だ。
 
 「これならどこでも楽しめるでしょ」と家人。はいはい、あなたの想像力にはいつも感服しております。持って行ってよし。山で探すのもよし。ブランコハイキング。おすすめです。

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晩秋の光

Takaneko

キッチンの小さなかごに入れた秋の収穫は、キクラゲ、むかご、そして小粒のフェイジョア。例年なら今頃は栗や胡桃、銀杏など狩猟採集の品を存分に楽しめた。今年は在庫が足りないのではないかね、奥様。なになに、あんたが夜中まで帰ってこないからありつけていないだけ。私と坊やは十分楽しんだって? ふむ、たしかにそんな気もする。

もはや師走だが少しでも収穫を堪能しようと、三浦まで足を伸ばしてハバノリ採り。少し時期が早いのか岩には若芽がうっすら。根こそぎとらないように気をつけて摘み取る。水はさほど冷たくない。坊やは水切りやイソギンチャクに指を突っ込んで遊んでいる。

Kurosaki

しかし秋の陽は釣瓶落とし。3人分の“ハバ”を摘むと夕暮れはあっという間にやってきた。陽は水平線の上をたなびく雲に吸い取られ、坊やは「初めて太陽が沈むの見たよ」とうなずく。そうだな、きょうが終わり、秋が終わり、今年もまもなく終わり。そんな当たり前のことを親父はしばらく忘れていたよ。明日からコートを替えて、冬を楽しもう。

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“ハバ”は2,3日天日で干してから、人肌の燗で一杯。テーブルの上にはススキのランプ。家人が作った今秋一番のお気に入り。ちなみに冒頭のキッチンのかごは、家人が小物作家のtakanecoさんに教えてもらって作ったそうです。ありがとうございました。

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Beach Trecker

Beachtrecker

お久しぶり。さて、これまでキクラゲやらタコやら様々なものを鎌倉あたりで狩猟採集してきたわけだ。ところが、読んだ人と直接話すと「鎌倉暮らし素敵だね」などとひとしきりうらやましがった後に、「もっと何かないの……」。へっ、そう言われても目についたものを採って食べるのが信条なんで……。

そう、鎌倉はいい。でもたまにはもっと違うものも楽しんでみたい、というわけで我が家はここのところハワイ・カウアイ島にはまっている。目的はもちろん狩猟採集。なにしろ採れるものが違う。

ご覧のとおり、マンゴーのてんこ盛り。水着にトレッキングシューズはいて、ガーデンアイランドの急な山道に入れば、ぷーんとグアバの甘酸っぱい香りが漂う。家人は鼻をくんくんさせながら、枝についている実を見つけては、口にほおばっている。「おい、あれはパッションフルーツだぞ」と一声かけると、坊やはいきなり木にとりついている。そんなこんなで2時間も歩くと、緑に包まれた美しいビーチに……。

収穫物で腹ごしらえをすると、危険な欲望が頭をよぎる。「ひょっとしてここなら、働かないで食っていけるかも…」。トレッキングですれ違った人も大荷物を抱えたビーチトレッカーばかり。僕らの目的地よりはるか先のビーチまで歩いていって、何日も過ごすという。もちろん、あるのは海と山と緑だけだけど水とわずかな食料さえもって行けば、贅沢な時間が過ごせる。これぞ採集民族の楽園。

とりあえず帰国したものの、「将来は…」とか考えてしまうね。
間があきすぎたので、おまけをつけます。コンドミニアムの隣の家にあったのは…

Mangopan

えっ、ひょっとして…

Mangobmid

まさか…

Mangoup

マンゴーだ!!
山でも拾えますが、となりの家のは本当に高級だった。それが地面にごろごろ。毎朝、1人マンゴー1個を食べて、あまったのはオーブンでドライに。

すっかり秋だというのに、いまだ夏休みボケのWildlife一家でした…

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雪の行方

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 一粒一粒が羽毛のようで、積もると思った昨日の雪は、いつのまにか雨に。そして今朝は一面の青空が広がる。「ユキダルマさん作ろう」と楽しみにしていた坊やは少しつまらなそうだが、寒がりの親父は一安心。
 数年前の大雪で、JR東海道線の車内に数時間閉じ込められたことがある。深夜の多摩川鉄橋上。車内には座れない客があふれ、トイレに困る人も。そのうち一人の女性が恐怖からか異様な泣き声をあげはじめた。それ以来、雪が降ると何となく不安な気分がつきまとう。
 ところが、休日のリビングから眺める雪は、家族の居場所と世界を遠く隔てる白いカーテンのよう。ふんわり家を包むように、白い世界にぽっかりした光と温かさが宿る。家人は「もう今日は買い物なし」と、雪ごもりを宣言。坊やは庭のサッシの前に寝ころんで、じっと雪を眺めていた。
 「雪はどこへ行っちゃったのかな」。今朝、坊やに問われた時、眼前の青空には、すっかり雪に覆われたこの冬一番の富士山が映えていた。

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空と海のあいだ

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 久しぶりに六国見山へ。目的はキノコ狩り。最近すっかり家人がはまっていて、散歩の目的はいつも同じ。もちろん収穫もあったんだけど、今日のメーンは海の眺めだね。六国見山の頂上からはもやの中に大島も見えて、そろそろ冬の始まりだと教えられる。夕方の相模湾の海面に雲の隙間から落ちる光の筋は、心を吸い取ってしまうよう。
 ハイキングにやってきた50代くらいの夫婦が、海を眺めながら言っていた。「あれは千葉だね」。
 もう何人目だろう。何でこんなに大島を千葉と思う人が多いのかな。おせっかいにも大島と教えてあげたら、びっくりした表情で「きれいねぇ」。別に千葉が大島になったからきれいになるはずもないんだけど、空と海の間にぽっかり浮かんだ、自分の踏みしめる地面とは違う大地。憧れはあるよね。

 

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表と裏

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 土砂崩れの現場を目前にしたのは、生まれて初めて。六国見山の尾根をはさんで我が家の反対側にある家人の実家を、きょう訪れて驚いた。観測史上最も強烈と予想されていた台風22号の風雨で、尾根から土砂と木々が崩落。泥流は下の公園の柵を破り、住宅地まで氾濫していた。人的被害がなかったから良いものの、一歩間違えば立ち並ぶ住宅を流し去っていたかもしれない。家人の両親は、想像もしない災害に声を失っている。路面にしみついた泥の色は、当分消えないだろう。
 さて、尾根の反対側に住む我が家では、台風が襲来した時間帯も、少々風雨が強いかなという程度だった。被害は、仕事に出ていた私が、交通マヒで桜木町に5時間ほど取り残されたことくらい。しかもその間、野毛の飲み屋で結構楽しくやっていたからね…。
 隣町の台では死者もでているし、各地の被害状況は目を覆うほどだけど、とりあえず身内の無事に一安心。 

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