目黒のメジロ

Mejiro
 雨の予報ですっかりあきらめていた5月最後の日曜日。目覚めたら青空が広がっている。さあ、どこへ行こうかと顔を洗って窓から外を見たら、こんにちは。おやおや、そんなところに住まわれていましたか。
 
 メジロ。鎌倉に住んでからは一番よく見かける鳥。いつも果樹のあたりで群れて、我が家の収穫を味見していたが、ついにシャラの木に腰をすえた。それにしても窓からわずか50センチ。ずいぶん信用されているね。最近読んだ新聞記事ではスズメが減り続ける一方、メジロは街で増えているとか。人のそばに平気で住む肝っ玉の太さゆえかな。
 
 メジロはどうやら抱卵中。坊やは初めて見る鳥の巣ごもりを食い入るように見つめている。そのうち「そばで見ちゃだめかな」なんて言い出して、外に飛び出した。「おいおい、びっくりして逃げちゃうぞ」と言いつつ、親父もカメラを持って追いかける。 
 
 スモモの木をくぐりぬけ巣の前に行くと、当然メジロはあわてて飛び出した。あたりで怒ってさえずり続けている。「ごめんごめん。ちょっとだけだよ」と謝りながら、坊やと巣をのぞきこむと「いた!! 目が黒いよ!!」w(゚o゚)w
 
Meguro
 
 3羽もお子さんがおられましたか。大きな口をあけて親鳥を必死に呼んでいる。坊やはびっくりして声も上げられない。そのうち「毛がないから寒そう。早く親鳥に戻ってもらおうよ」だって。
 
 部屋に戻ってしばらくすると、メジロは何事もなかったように、巣に戻っていた。よく見ると集めた草を蜘蛛の糸でからめて作った巣も見事なつくり。何度も素材を集めてきて編み上げる力が、小さな鳥のどこに隠されているのだろう。目前にはジューンベリーの木。果実はそろそろ食べごろ。そんなことも考えて居を構えたのか。「今年はメジロにも分けてあげなくちゃね」。坊やはいつの間にかベリーで唇を真っ赤にしている。

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たけのこ焼けた?

Soramame

 「5連休、本当にいいのか」と何度も確かめたけれど、今どきの会社は社員が休むほうがありがたいらしい。でも、このインフルエンザ禍では海外に行くわけにもいかず、「1000円乗り放題」の渋滞高速に突入する勇気も……。ならば、久しぶりに庭を満喫。
Okome 
Yaitara 
 焼きソラマメをつまみながら見つめているのは、脇にゴロリ横たわったとれとれのたけのこ。熾き火でじっくり焼くと、ゆでるよりずっ
とおいしくなるんだな、これが。どうせなら一緒に切ってきた竹でご飯も炊いてみようじゃないか、と本当に久しぶりの盛り上がり。やっぱり休みはこうでなくちゃね。 
     だいたい焼いた野菜っておいしすぎる。ソラマメはワタの水分で、ふっくらみずみずしい焼き上がり。ゆでたヤツとは味の濃さがまるで違う。野菜自体の水分でゆで上がるから、うまみが損なわれない。いくら焼いても家人と坊やにつままれて、飯が炊き上がるころにはレジ袋満杯のソラマメがすべて消えていた。 焼きたけのこと竹筒飯も原理は同じだから、おいしいに決まってる?

Chikutouhan

 さて、竹筒飯。竹筒から出る水蒸気が透明になってきたあたりで、できあがり。しばらく蒸らして竹を割ってみれば、ふわっと竹の香りが庭中に漂った。と同時に焼いた丸のたけのこを包丁で割ると、薄黄色の身から湯気が噴き出すようにあがって香ばしい空気はさらに濃密に……。あとはたけのこにしょうゆをタラリとたらしてかぶりつき、竹のエキスがしみこんだご飯をかきこむだけ。一口かみ締め呼吸するたびに、口中はもちろん、たけのこの若い香りと甘みが体中にしみこんでいく。坊やでもたけのこ丸々一本軽くいってしまう感じ。ご飯もあっというまになくなった。

Yakitakenoko
 
 実は鎌倉に住み始めてここ10年ほど、店でたけのこを買ったことがない。持つべきはよき友。おかげで以前は知らなかったたけのこの味を、今は味わえる。でも、生まれて以来自分で掘ったたけのこを食べている坊やにとっては、この味が当たり前か。「もう1本食べていい?」なんて言いながらかぶりつく彼がうらやましいやら悔しいやら……。
 たけのこ食べて背も伸びたか? あした確かめてみよう。

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熟秋

Feijoa2






 森の葉が落ち始めて、散歩が楽しい時期なのに、あいにくの雨。我が家のあたりはうっすらと霧がかかって、冬が近づいていることを教えてくれる。こんな日は熱いコーヒーをすすりながら、カメラいじりでもしているしかない。追熟中のフェイジョアで遊んでみる。
 初夏には花が満開で、どれくらい取れるかと楽しみにしていたのに、よい具合に実ってくるとメジロが来襲。なかなかたっぷり収穫というわけにはいかない。
 一粒手にすると、ふんわりさわやかな香りが立ち上ってくる。南国風の果実なのに、すっきりした感じが好み。もう少ししたら、酸味が感じられるようになるのかな。昔作ったハスの果托にサンキライと飾り付けてみたら、ふむ、自然なクリスマスカラーがよい感じ。憧れのモランディ風とまでは言わないけれど、手にとって見たくなるでしょう。
 最近は気が早い人が多いようで、もう壁面全体にクリスマスのイルミネーションを飾り付けている家がある。まあ、好みだけれど、我が家はこれくらいの彩りで十分。
 「フェイジョア、いつ食べる?」と聞くと 坊やは「うぅん、ぼくは今忙しいから」なんて言う。最近,読書に夢中。こいつも少し熟してきたかな。

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やっぱり秋は…

Akihousaku

 さて、お久しぶり。ちゃあーんと帰ってますよ。ハワイ暮らしは夢ですが、まだまだ稼がなくてはかないません。構想はいろいろあって、たとえば豆盆栽の店をホノルル辺りに出す。もちろん、豆盆栽はカウアイで暮らしながら生産するという具合。気候がよいし、森の中には結構コケが生えていたりして、うまくいきそう? 夢は広がりますな。
 
 と、帰国後もたわいもない話ばっかりしていたら、さすがに家人が怒りだした。「うまくいくわけない。だいたい、日本でもハワイに負けないほど収穫を楽しんでいるでしょ」だって。確かに。今年はどれもこれも本当に豊作。晩酌の銀杏はもちろん栗も胡桃も何度も楽しんだのに、まだ冷蔵庫に大量保存されている。早々秋らしくなった気候が良かったのか、毎年同じこと繰り返しているから、採れそうな場所の勘が利くようになったのか。「チルドにしておけばどんどん糖度が高くなる。これで正月の栗きんとんは安心。胡桃はペーストと胡桃パンをつくって楽しもうか」と家人。ほんと、冬眠に備えるリスみたい。
 
 そういえば、栗と胡桃はともかく銀杏を海外で食べるって話はあまり聞いたことがない。中国くらいかな。やっぱり臭いが敬遠されてしまうのかな。こんなにおいしいのに。熱々の銀杏の殻を割って、ぬる燗をちびちびやりながらひとりごつ。
 
 やっぱり秋は鎌倉……。

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ピーカンBBQ

Barbeque1
 見事なピーカン。気温もまさに真夏。エアコンなしのわが家はもちろん逃げ場なし。ならば暑さを思いっきり楽しもう。
 ピーカンバーベキュー。定番はラムのケバブ。ミンチして刻んだニラと合わせたら、適当な枝にぐるりと巻き付けて焼くだけ。簡単でしょう。
 
 なに? 何の工夫もなくて、珍しくもないって? いやいやよく見て下さいな。秘密は枝に……。そう、月桂樹。切ったばかりの枝で焼くとフレッシュな香りが思いっきり肉に染みる。そいつをガブリとやれば、香りとラムのうま味が口中いっぱいに広がって、もうたまらんという感じ。ソーセージなども枝先に刺して焼くと味はまるで別物に。
  
Barbeque2

 坊やはケバブの焼き方も、すっかり手慣れた様子。素焼きのプランターが七輪代わりになることに、しきりに感心している。「そろそろパンも焼こうか」だって。日が暮れたら、またキャンドルを灯して、夜風と赤ワイン。ゆっくり夏の旅行先でも考えようか。

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森のブランコ

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 「山いこうか」。家人と坊やが言い出すのはいつものことだけど、今日は荷物が違う。穴をあけた板とロープ?持って行ってどうするのかと聞けば、やっぱり……。
 
 森のブランコ。家のつるのブランコはすっかり壊れてしまったので、新しいのを作るかと思っていたら、家人はもうそれでは物足りないらしい。山道を少し外れると、地面に向かって長々と枝を伸ばしている大木を発見。家人は手馴れた様子でロープを枝に投げかけ、板の穴に通して結べば出来上がり。思いっきり坊やの体を持ち上げて、枝の向こうに投げつけてやると、ブランコは公園ではとても望めない大きな弧を描いた。坊やは「ひゅーひゅーっ」と叫びながら、本当に気持ち良さそうだね。
 
 親父も試してみる。体重68㌔ではどうかと恐る恐る乗ったものの、木は軽々と受け止めて、緑のなかに跳ね上げる。子どものころは、これくらい思いっきりブランコをこいだよな。ひょっとしたら一回転してしまうかもと思うほどこぐと、目の前には空しか見えなくなって、手を離したら飛んでいけそうな気がして……。
 
 実は同じようなことを考える人が意外にいるらしい、森を歩くと枝から吊ったブランコに時折出会う。中でも御●の森の高さ10㍍ほどの枝にかかったものは、どうやってぶら下げたのか。乗ってみれば山の斜面から空に飛び出してしまいそう。スリル満点だ。
 
 「これならどこでも楽しめるでしょ」と家人。はいはい、あなたの想像力にはいつも感服しております。持って行ってよし。山で探すのもよし。ブランコハイキング。おすすめです。

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桜の置き土産

Morel

 八重桜の花びらのそばには収穫らしきものがずらり。さあ、これなんだ。 
 アミガサダケ、フランスではモリーユ(Morel)と呼ばれる高級キノコとか。もちろん、家人がそう言っているだけ。だいたい姿が不気味じゃないか。しかも家の前の桜の藪で、坊やと友達がこの数倍ほど収穫したという。話がうますぎる。きっと毒だ、やめておけ。
 深夜に帰宅して収穫を見せられ小言をひとくさり。もちろん、家人は気にもせず言い切った。「もう坊やと食べちゃったよ。おいしかったよ」。はぁ、あきらめてますよ……
 
 一応、書物を確認するとこれは春が旬のキノコで花が散った桜の根元に出るという。毒のある品種もあるが、見かけがまるで違い素人でもわかるとも。ふむ、大丈夫かな。
 収穫後に干してほぼひと月、相性がよいというバターソテーで試してみた。一口かみ締めるごとに滋味が口中に広がる。歯ごたえはかなり固め。もうすこしやわらかくしてクリームソースとあわせたら、確かに癖になるかも。来年はいろいろなレシピで試してみようか。
 
 それにしても、食べ物に関してはやっぱり女の方が貪欲らしい。一緒に収穫した坊やの友達のママさん2人は家人を信じ切って、収穫したその日に食べてしまったとか。おまけに腹痛に見舞われた一家も。キノコが腐っていたのか、調理が足りなかったのか。それでめげる様子もない??
 その女、無謀につき。皆様、家人の言うことを鵜呑みにしていると、どうなるか知りませんよ。というより、同種の女性が増えることに怖さを感じるのは私だけでしょうか……

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若葉

ハンモックに揺られながら、桜吹雪を眺めていた。標高の高い我が家は今日が桜の盛り。いつも何か得した気分になる。毎年都内で花見のどんちゃんを楽しんでいるけれど、結局、春風と花吹雪の中でぶらぶらしているのが最高なんだよね。となりの坊やはぐっすり昼寝中。Mimoza6
きょうはこれだけで十分とつらつら本を読んでいたら、家人はやっぱりやってきた。「夕食どうするつもり」。「はあ、まだ日本酒はあるよ」と答えれば、「つまみはどうすんのよ、はやく起きて」だって。気配を察知して、坊やもしぶしぶ起き上がった。

行く場所は決まっている。裏山の藪の中。けもの道ならぬママ道をアズマネザサの枝を掻き分け歩いていくと、今年もタラの木(上)は天にまっすぐ伸びている。すぐ横にはハリギリ(中)、ちょっとはなれた日当たりのよい場所にはカラスザンショウ(下)も……。

Karashizansho1

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「はい、タラの芽なんとかしてよね」と家人はとげだらけの木のてっぺんから伸びる芽を指差し、なぜか傘を一本。ふむ、取っ手を木にひっかけて少し曲げてやると、上の斜面から何とかもぎ取れた。もちろん、全部芽をとったら枯れてしまうので、来年の楽しみも残しておく。ハリギリとカラスザンショウはできるだけ若い芽を選んで取れるだけ。

夜、若葉の天麩羅で一杯やりながら考える。いつもほんとに家人の食欲には感心するし、春の若葉の味の良さも文句なしだ。でも……。これがほろ苦さってやつかな。

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月とミモザ

Mimoza1

 二日酔いの朝は年々つらくなっていく。朝飯が食べられないだけなら、ましな方。酔い覚ましのお茶を飲みながら、昨晩あったことを思い出してみる。あいつと飲んで、気分がよくなって、何軒かはしごをしたっけ。そして、家の前でタクシーを降りて……。ん? どこからタクシーに乗ったの?
 
 いい年をして何をやっているのかとしょっちゅう言われているけれど、まっ、こんなもんでしょ。今こうしている自分が一体どこから来たのかなんて考えるまでもなく、たいていはいるべき場所に戻れるわけだし、これからも多分うまく過ごしていける。でも、そもそも自分はどこから来てどこに行く途中だったのか。そういえば最近は考えることさえない。
 
 同じ仕事をしてきた友人がまもなくやめる。大学時代、初めて会ったときから同業になる予感はしていた。向こうは世界を股に駆けての大仕事。こちらは街ネタ一本やり。考え方もまるで違うけれど、「満足している奴が嫌い」なのは同じ……。だからかな?
 
 うまく過ごしていけるのが、時にたまらなく嫌になる。そんな時、あいつは目をそむけてはいけない何かを見てしまったのだろう。
 
 月とミモザ。まだ骨にしみる寒さの中、花はやけに凛としている。

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春の雪

Fukinotou2

「ふきのとう採りに行こう」。家人がこう言い出した時はさすがに驚いた。久しぶりの大雪。標高の高い我が家の辺りは20センチは積もっている。先日空き地で見つけたのがそろそろ食べごろというが、こんな日に誰かに先を越されるはずもないのに。

見事な降りっぷり。空き地は雪が下草に持ち上げられて膝下まで積もっている。家人はそんなことお構いなしにザクザク足を踏み入れていく。雪をかきわけてしばらくするとその手にはふきのとうが……。今年の寒さは厳しいのに春の使者はみずみずしい緑を放ち、ぷっくりと太っている。 「おいしそうでしょ?」と満足げに話す家人に雪玉を一発お見舞い。あとは坊やも参加して、犬も食わない夫婦雪合戦。

それにしても、雪の休日は家人と坊や以外の人を見かけたことがない。住んでいる場所が原因なのだろうけれど、いつもよりずっと濃密な家族の時間。白い世界にあたたかく包まれて、額縁の中に入れられたような気分になる。

収穫はもちろん、晩のメーンに。そのまま天ぷらにするのもよいけれど、白味噌とモッツァレラチーズをつめて揚げてみた。チーズと味噌のこくで花芽の苦味が和らいで、よりさわやかな春の味わいに。「オニは外、福は内」と声を張り上げる坊やを眺めながら、ぬる燗で一杯。雪の立春。白い一日。

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